ドイツワインの巨匠・古賀守氏は、私がドイツワインの“真実”を学ぶきっかけを与えてくれた人でした。30年以上前の事、「ワインを扱うなら、一度会ってみたほうが良い」という知り合いの勧めで、東京までセミナーに参加するために何度も足を運びました。逆に先生を浜松にお呼びし、セミナーを開いたこともありました。
ドイツワインが「日本酒に近い甘みと香りを持つ」ということから、日本人が抵抗なくワインを楽しむための“導入のワイン”としてこれ以上のものは無いことを教えられ、私自身もドイツワインをきっかけに、フランス、イタリア、チリ、ルーマニア等、コストパフォーマンスに富んだ各国のワインと出会うことができました。
ドイツに実際に渡り、様々なワインを飲み歩きました。その時に出会った忘れられないワインを紹介します。
一つはモーゼル地方のザール地区、ここにドイツを代表する醸造所“エゴン・ミュラー家”があります。ここの主人ミュラー氏に歓迎されて飲んだ「シャルホーフ・ベルガー」というワインは最高の味だったことを今でも覚えています。
もう一つはラインガウ地方の“クロスター・エーバー・バッハ”と呼ばれる国立ワイン醸造所のワイン。元修道院のこの醸造所が持つ、ドイツ最大の規模を誇る約32haの自家葡萄園には、ただ「すごい!」の一言でした。
ドイツワインの良さは、そのナチュラルな甘さです。最近では辛口ワインも多く造られていますが主流はデザートワインです。その自然な甘味をいかに残すか、それがドイツワインの真髄と考えます。
●古賀守プロフィール
1914年(大正3年)長崎県佐世保市の醸造家に生まれ、家業を継ぐため、東京農業大学農芸化学科に学び、卒業後1936年~1945年まで、ドイツのハイデルベルク、ローストック、ライプチッヒ各大学の哲学部で化学を専攻。終戦をドイツで迎えた数少ない日本人の一人でもあり、その後帰国し日本のドイツワインの権威者として数々の著書を持つ。
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